2025年2月19日
2025年4月1日 改正育児・介護休業法対応のための社内整備(後編)
・・・テーマ3 改正育児・介護休業法Q&A・・・
テーマ3では、厚生労働省の「令和6年改正育児・介護休業法に関する Q&A」を基に、中小企業のご担当者が「改正育児・介護休業法」に対応するうえで疑問に感じやすい箇所を掘り下げてご紹介します。
【育児編】
Q1.事業主が「柔軟な働き方を実現するための措置」を選択する場合に、過半数労働組合等から意見を聴取することになっていますが、2025年10月1日施行日までに、意見聴取をする必要はありますか?
A1.施行日に「柔軟な働き方を実現するための措置」が講じられるよう、施行より前に、過半数労働組合等から意見を聴くなどの必要があります。なお、意見聴取の方法については法令上の定めはありませんが、育児当事者等も含めて丁寧にコミュニケーションをとっていただくことが重要です。
Q2.「柔軟な働き方を実現するための措置」を企業単位で2つ措置するのではなく、業務の性質または業務の実施体制に照らして、事業所単位や事業所内のライン単位、職種ごとに措置しても問題ありませんか?
A2.そのような対応で問題ありません。措置の選択にあたっては、職場の実情を適切に反映するため、事業所の業務の性質や内容等に応じて措置の組み合わせを変えるなどの取り組みを行うことが望ましいです。
Q3.「柔軟な働き方を実現するための措置」について、事業者は正規・非正規雇用労働者で異なる措置を選択しても良いのでしょうか?
A3.異なる措置を選択する場合には、待遇の性質及び目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理な待遇差に当たらないようにすることが求められます。あわせて、もし正規・非正規で異なる取扱いをするならば、事業主においてその差異の理由を労働者に対して合理的に説明できる必要があります。
Q4.「柔軟な働き方を実現するための措置」のうちの1つに、「就業しつつ子を養育することを容易にするための休暇(養育両立支援休暇)の付与(10日以上/年)」というのがありますが、この休暇は無給でも良いのでしょうか?
A4.労働者が「養育両立支援休暇」を取得している期間については、労務を提供していないため、無給でも問題ありません。ただし、企業独自に法を上回る措置として有給とする対応にしていただいても構いません。
Q5.「柔軟な働き方を実現するための措置」の個別の周知・意向確認について、事業主は、いつ、どのような内容で、どのような方法により実施すれば良いでしょうか?
A5.労働者の子が3歳の誕生日の1か月前までの1年間(=1歳11カ月に達する日の翌々日~2歳11カ月に達する日の翌日まで)に、当該措置の内容、内容の申出先、所定外労働・時間外労働・深夜業の制限に関する制度について、労働者に対して、個別に周知するとともに意向確認を行う必要があります。方法については、①面談(オンライン可)、②書面の交付、③FAXの送信、④電子メール等の送信のいずれかによって行います。ただし、③、④については労働者が希望した場合のみ実施可能です。
Q6.子の看護休暇が見直しされ、新たに取得事由が追加されましたが、授業参観や運動会に参加する場合でも取得可能なのでしょうか?
A6.新たに追加された取得事由としては、“感染症に伴う学級閉鎖”や“入園(入学)式及び卒園式”となります。授業参観や運動会に参加する場合には、法的には子の看護等休暇の取得事由としては認められませんが、法を上回る措置として、事業主が独自の判断で取得事由に含めていただいても構いません。
【介護編】
Q7.「介護離職防止のための個別の周知・意向確認の措置」は、2025年4月1日から開始されますが、この措置は4月1日以降に介護に直面した旨の申出があった労働者に対して行えば良いのでしょうか。
A7.その通りです。なお、あらかじめ、2025年4月1日より前に介護に直面した旨の申出等により介護に直面していることがわかっている労働者に対しては、個別の周知・意向確認の措置を行っていただくことが考えられます。
Q8.個別の周知・意向確認の措置について、取得や利用を控えさせるようなことは認められていませんが、具体的にどういった場合が取得を控えさせるようなことに該当しますか?
A8.例えば、取得や利用の前例がないことをわざわざ強調することなどが考えられます。なお、取得や利用の申出をしないように抑制する、申し出た場合の不利益をほのめかすといった、職場における介護休業等に関するハラスメントに該当する様態も含まれます。
Q9.「介護に直面する前の早い段階での両立支援等に関する情報提供」について、年度当初などに対象となる労働者を一堂に集めてまとめて実施しても問題ないでしょうか。また、オンラインでの研修の実施でも可能でしょうか。
A9.介護休業や介護両立支援制度等の理解と関心を深めるために行うものであるため、年度当初などに対象者を一堂に集めて行っていただいても問題ありません。介護保険制度の周知にあたっては、厚生労働省がリーフレットを作成しているため、活用されるのがお勧めです。動画によるオンライン研修も可能ですが、事業主の責任において、受講管理を行うこと等により、労働者が研修を受講していることを担保することが必要となります。
Q10.介護に直面している社員がいません。また、採用する予定がない場合でも、雇用環境を整備する必要はあるのでしょうか。
A10.介護休業や仕事と介護の両立支援制度等の対象となる家族には、直系の祖父母や配偶者の父母も含まれることから、幅広い年齢の労働者が利用に係る申出を行う可能性があります。また、義務の対象となる事業主を限定していないことから、すべての事業主が雇用環境の整備をしていただく必要があります。
以上、「改正育児・介護休業法」で疑問に感じやすい箇所を中心にQ&A形式でご紹介しました。繰り返しになりますが、育児面の改正は、4月~、10月~と2段階施行となっています。10月施行分もあらかじめご検討の上、対応されると労力を減らせるかと思います。

編集者:井上晴司
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