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2025年3月3日

入社・契約更新で労働契約を結ぶときのポイント 2

3月、4月は入社・契約更新などで新しく労働契約を結ぶことが多くなる季節です。「転勤があるなんて聞いていない!」「給料が事前に提示されていた額より約5万円低い」「聞いていた仕事とは違う仕事をさせられた」など、就職活動や転職活動において入社前に提示されていた条件・待遇と実態が異なるといった話題がSNS等で飛び交うのもこの時期に増えます。SNSでそういった情報が拡散されてしまうと、企業にとってはブランドイメージの低下、信用の失墜など大きなダメージとなり、くれぐれも注意したいところでしょう。こういった労働契約トラブルを防ぐにはどうしたらいいのでしょうか。昨年4月改正の労働条件明示のルールをふまえながら、入社・契約更新で労働契約を結ぶときのポイントについて前回に続いてご説明します。

 

・・・テーマ2 労働条件の明示で気を付けること・・・

テーマ1で「労働契約を結ぶときの基本」をご説明しましたが、それをふまえたうえで、テーマ2では、「労働条件の明示をする際に気を付ける」ポイントを5つご説明いたします。

■ポイント1:求人票の内容と労働条件が異なっていないか?

よくあるトラブルに、求人票の内容と実際の労働条件が異なり、揉めるケースがあります。場合によっては、“求人詐欺”などとSNSで拡散されたり、労使トラブルに発展する可能性があるため注意が必要です。実際に、入社時の労働条件が、ハローワークの求人票のとおりであるか、入社1か月後に取り交わした労働条件通知書の記載のとおりであるかが争われ、求人票記載の労働条件で労働契約が成立したと認定されたケースもあります(平成29.3.30京都地裁判決 福祉事業者A苑事件)。このようなトラブルを防ぐためにも求人票の内容をよくチェックし、労働条件を明示する際には、双方で認識のずれが生じないように気を付けましょう。

■ポイント2:労働基準法に則った労働条件になっているか?

企業が守らなければいけない労働契約の条件は「労働基準法」に定められています。労働契約の内容が法に則っていないと、労基法違反として懲役・罰則が科される場合があります。万一、労働条件が労基法を下回った場合、労基法に違反する労働契約として無効となり、無効となった部分は、労基法の基準が適用されます。

■ポイント3:口頭で明示できる項目もあるが、可能な限り書面交付しておくと安心

書面で必ず明示する必要のある労働条件以外は、書面ではなく口頭で明示しても問題ないとされています。ですが、口頭で契約した場合、契約内容の証明ができず、「この条件で契約した」「そんな覚えはない」などといった堂々巡りの話になってしまいます。こういったトラブルを防ぐために、賞与や退職手当、表彰・制裁、休職など就業規則で定めているものについても書面交付し、労働者の合意を得るようにしましょう。

 

■ポイント4:「パートタイム労働者」「有期労働契約者」は明示義務が追加

「パートタイム労働者」「有期労働契約者」を雇用する際には、「昇給・賞与・退職金の有無、相談窓口(担当者名、役職、担当部署など)」を明示する必要があります。「昇給の有無」について書面交付などで必ず明示する必要がある点が、正社員と異なります。規定に違反した場合は、10万円以下の過料が科せられる可能性があるため、気をつけましょう。

「有期労働契約者」を雇用する際は、「更新上限の有無と内容)」のほか、同一の使用者との間で、有期労働契約が通算5年を超える場合(更新時)には、「無期転換申込の機会とその労働条件」についても明示する必要があります。

■ポイント5:全従業員に対して就業規則を周知しているか?

労働契約上の労働条件のほとんどは、実際には「就業規則」や「労働協約(※労働組合がある場合)」といった“集団的なルール”によって決定されているものです。テーマ1で示した必ず明示する必要のある労働条件だけでは、入社時の労働条件をすべてを網羅しきれなかったり(例えば、「欠勤」「自然退職」「懲戒解雇」など)、途中で就業規則の内容(労働条件)を変更することもあるかもしれません。「労働契約の内容を就業規則で定める労働条件によるもの」とするには、「使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知」させているかどうかが重要です。見やすい場所に掲示するなど、いつでも見られるようにし、全従業員に就業規則を周知しましょう。

井上晴司

編集者:井上晴司

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