2025年5月28日
中小企業向けカスタマーハラスメント防止対策のポイント テーマ3
・・・テーマ3 中小企業ができるカスタマーハラスメント対策・・・
企業がカスタマーハラスメント対策を講じるうえで重要なことは、テーマ2の事例からも見て取れるとおり、裁判所から「安全配慮義務違反」と判断されてしまうような対応を行わないことです。テーマ3では、安全配慮義務の履行をふまえた上での対策についてご説明いたします。
■安全配慮義務の履行をふまえた対応
企業が安全配慮義務を履行するためには、以下のような対応が考えられます。
① カスハラ行為が起きた際の対応手順(マニュアル)を作成し、周知
② 相談対応者が相談の内容や状況に応じ、適切に対応できるように体制を整え(※)、周知(※「単独で対応すべきではない」と判断される場合には、複数で対応するなど適切なバックアップ体制を整える)
③ クレーム対応における悩みなどを相談できる「相談窓口」の設置や、ストレスチェック・面接指導などを実施する体制を整え、周知
④ 担当者が適切にカスハラに対応できるよう、教育・研修等を実施
⑤ 一定の期間ごとに配置転換を行い、特定の担当者が長期間・継続的にストレスを感じないように配慮する
上記をふまえて、中小企業が取り組みやすい対策について4つのステップでご説明します。
■ステップ1.事業主の基本方針・基本姿勢の明確化、従業員への周知
企業として、職場におけるカスタマーハラスメントを許さない旨の方針を明確にした上で、トップ自ら発信します。基本方針を店内やホームページなどで公表し、顧客へ周知することも有効です。厚生労働省のHPから「カスタマーハラスメント対策ポスター」を無料でダウンロードできるので活用されると良いでしょう。
企業の姿勢が明確になることで、カスタマーハラスメントを受けた従業員や周囲の従業員が、トラブル事例や対応策について発言しやすくなります。その結果、トラブルの再発を防ぐことにもつながります。
■ステップ2.相談対応体制を整備し、周知
次に、従業員が気軽に相談できるように、相談対応者(相談者の上司や現場の管理監督者等)を決めたり、「相談窓口」を設置するなど相談対応体制を整備し、周知します。カスタマーハラスメントが実際に発生している場合だけでなく、発生のおそれがある場合や、カスタマーハラスメントに該当するか判断がつかない場合も含め、幅広く相談に応じながら迅速かつ適切に対応できるようにしておくことが望ましいでしょう。このような対応を実現するために、総務部等社内部門や外部の専門家(弁護士や社労士等)との連携体制を構築するとともに、具体的な対応方法をまとめたマニュアルの整備、相談対応者向けに定期的な研修の実施等をするのがさらに効果的です。
■ステップ3.カスタマーハラスメント対応方法、マニュアルの策定
実際にカスタマーハラスメントを受けた際、慌てず適切な対応がとれるように社内の対応ルールを決め、その流れをマニュアル化します。カスタマーハラスメントには、時間拘束型、リピート型、暴言型、暴力型、威嚇・脅迫型、店舗外拘束型などさまざまなパターンがあることから、社内対応ルールを検討するにあたっては、自社における“カスタマーハラスメントの定義”を必ず明確にしましょう。実際に起きた例や、自社の“定義”をもとに、柔軟な対応を想定し、策定するのがお勧めです。
顧客等への対応は、基本的に複数名で対応します。対応者をひとりにさせないことや、行為が深刻な場合は一次対応者に代わって現場監督者が対応するなど、従業員の安全にも配慮する必要があります。現場監督者や管理者がいないケースも想定されるため、現場従業員だけでも対応できるように基本的なカスタマーハラスメントへの対応方法のマニュアルを策定し、周知しましょう。
■ステップ4.社内対応ルールの従業員等への教育・研修
顧客等からの迷惑行為、悪質なクレームに対応できるように、日頃からカスタマーハラスメントへの社内の対応ルールについての教育や研修を行いましょう。研修等については、中途入社の従業員や顧客対応を行うアルバイトなど全員が受講するようにし、かつ定期的に実施することが大切です。
教育するときは、ステップ3で策定したマニュアルを使用するとよいでしょう。内容としては経営層のメッセージ、カスタマーハラスメントへの対応方法や手順、顧客等への接し方のポイントといった接客実務のほか、自社の従業員がカスタマーハラスメントの行為者にならないための啓蒙といった点も重要です。
以上、安全配慮義務の履行をふまえた対応、中小企業が取り組みやすい対策についてご説明しました。マニュアルの作成や相談対応体制の整備などを行ったら、必ず従業員に周知しましょう。なお、カスタマーハラスメント対策については厚生労働省から対策リーフレットが公表されているため、あわせてご参照ください。

編集者:井上晴司
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